昨今「サステナビリティ」という言葉を耳にする機会が増えたのではないでしょうか?企業における環境保護活動や社会貢献活動が着目されるなか、注目している方も多いのではないかと思います。今回はサステナビリティに関する基本的な内容の紹介から、ビジネスの観点でのメリット、事例などをご紹介します。
サステナビリティとは
サステナビリティの由来と背景
サステナビリティ(sustainability)とは、「sustain(持続する)」と「able(〜できる)」が組み合わされた言葉で、直訳すると「持続可能性」という意味です。もともとは水産業界で、水産資源を減らさずに漁獲量を持続させるという意味で使われていました。2015年の国連サミットで採択されたSDGs(持続可能な開発目標)と深い関係があり、最近では企業経営の観点として重要視されています。SDGsの目標には、環境問題、貧困・飢餓、ジェンダー問題などが含まれ、これらはサステナビリティ3つの柱(環境保護、社会開発、経済発展)と密接に関わっています。また、1987年に国連の「環境と開発に関する世界委員会」が発表した報告書で「Sustainable Development(持続可能な発展)」という言葉が使われたことにより、広く知られるようになりました。企業活動においては、目先の利益を追い求めるのではなく、自然環境や社会システムの維持にも目を向けるといった社会的責任を果たし、持続可能な発展を目指す考え方や活動を指します。長期的な企業戦略として「コーポレート・サステナビリティ」を掲げ、公表する企業も増えてきています。
サステナビリティ経営とは
サステナビリティの3つの柱である「環境」「社会」「経済」を考慮することで、事業の持続可能性を図る経営がサステナビリティ経営です。
社会貢献活動(CSR)をおこなう企業はこれまでもありましたが、これらは経営や事業とは切り離された別の活動として捉えられていました。一方、世界的にSDGsの目標達成を推進するなかで、企業が長期的に存続するためには、サステナビリティ経営が不可欠であるとの認識が広がっています。
サステナビリティとSDGs、CSR、ESGとの違い
サステナビリティとSDGsの違い
SDGsは「Sustainable Development Goals(持続可能な開発目標)」の頭文字をとった言葉です。2015年9月の国連サミットで採択された、2030年までに達成すべき世界共通の目標です。「誰も置き去りにしない社会」を目指し、「経済」「社会」「環境」に関する17の目標と、その目標を達成するための169のターゲットにより構成されています。
「持続可能な発展を目指すという考え方」を指すサステナビリティに対し、その具体的な目標を示したのがSDGsであり、両者は相互補完的な関係にあるといえます。また、SDGsは2030年までに達成すべき目標であるのに対し、サステナビリティは期限の定めはなく長期的な取り組みを求められる点でも違いがあります。
SDGsとは? | JAPAN SDGs Action Platform | 外務省
サステナビリティとCSRの違い
CSRとは「Corporate Social Responsibility(企業の社会的責任)」の略です。企業は経済活動において、自社の利益追求や法令遵守だけでなく、ステークホルダー(顧客・取引先・従業員・投資家など)や社会環境に配慮した経営が求められます。ステークホルダーの要望に応えて信頼を得るため、適切なコミュニケーションや情報開示などの取り組みをCSRといいます。
持続可能な成長や発展を目指す考え方や方向性は同じですが、CSRは企業が主体であるのに対し、サステナビリティは企業だけではなく、国家や個人など社会全体の広範囲に及びます。
サステナビリティとESGの違い
ESGとは、Environment(環境)・Society(社会)・Governance(ガバナンス:企業統治)の頭文字をとった言葉で、企業が長期的成長を目指すために必要な観点です。環境や社会に配慮し、適切な企業統治をおこなうというESGの3要素を重視する経営方法を「ESG経営」と呼びます。近年、ESG経営をおこなう企業は企業価値が高まる傾向にあります。ESG経営をおこなうことは、長期的な成長を支える経営基盤の強化につながると考えられています。
持続可能な成長や発展を目指すという考え方であるサステナビリティに対し、ESGは経営や投資のスタイルを意味する言葉なので、ESG経営はサステナビリティを実行する手段といえます。
サステナビリティを意識した経営のメリット
企業ブランドの価値が向上する
環境問題や社会問題について注目が集まるなか、企業には社会全体を考慮した行動が求められています。それを実現できるかどうかが、企業の価値を決定するといっても過言ではありません。
そのため、サステナビリティに取り組むことは企業のイメージアップにつながります。積極的に取り組み、ステークホルダーからの信頼を得ることで、企業の社会的評価が向上し、業績の向上も期待できます。
事業拡大のチャンスになる
サステナビリティの取り組みは、紙やプラスチック、エネルギーなどの資源を有効活用し、無駄なコストの削減につながる可能性もあります。
「ビジネスと持続可能な開発委員会(Business and Sustainable Development Commission)」が2017年に発表した報告書では、「グローバル目標を達成することで12兆ドルの機会創出になる」と予測されており、サステナビリティ関連の事業拡大が期待されています。環境関連の製品やサービスに対する需要の高まりや、サステナビリティに取り組む企業同士の連携によって、新規事業開拓のチャンスも広がっていくと考えられます。
従業員エンゲージメントが高まる
サステナビリティに取り組む企業は、ステークホルダーを中心に社会全体から高い評価を受ける傾向にあります。また、サステナビリティ経営の一環である職場環境の改善により、従業員の満足度やパフォーマンスが高まり、離職防止や採用コストの削減、優秀な人材の確保にもつながるでしょう。
資金調達の面で有利になる
近年、投資の基準としてESGが重視されており、ESG経営に取り組んでいる企業に投資する「ESG投資」が世界のトレンドとなっています。つまり、環境や社会の課題に配慮し、サステナビリティに注力している企業は資金を集める際にも有利であるといえます。
サステナビリティのガイドライン、指標
企業がサステナビリティに取り組むメリットを享受するためには、適切な情報開示をおこない、社会的に評価される必要です。ここでは、情報開示の際に必要な国際基準のガイドラインや投資家向けのESG観点の指標を紹介します。
ガイドライン:「GRIスタンダード」
「コーポレート・サステナビリティ」のテーマを検討するためには、自然保護や社会への配慮など、非常に広範な分野をカバーする必要があります。
「GRIスタンダード」は国際基準のガイドラインのひとつであり、国際的な非営利団体GRI(Global Reporting Initiative)が策定したものです。企業が説明責任を果たすための枠組みとして活用されています。サステナビリティの対象とされる経済、社会、環境の3つの分野から詳細な報告基準がピックアップされています。多くの企業がこの「GRIスタンダード」を活用し、サステナビリティ報告書を作成しています。
GRI – GRI Standards Japanese Translations
指標: 「DJSI」
「DJSI(ダウ・ジョーンズ・サステナビリティ・インデックス)」は、金融市場指標を幅広く提供している米国S&P Dow Jones Indices社と、サステナビリティ投資に特化した投資会社であるスイスSAM社(現S&Pグローバル)によって開発された投資家向けの指標(インデックス)です。長期的な株主価値を重視し、ESG(環境・社会・ガバナンス)の観点から評価されます。DJSI銘柄に選定されることは、投資家や外部ステークホルダーに対する大きなアピールとなるため、DJSI銘柄選定を目指す企業は日本でも増えています。
企業のサステナビリティ取り組み事例
アパレル業界|ユニクロ(ファーストリテイリング)
アパレル業界大手のユニクロ(ファーストリテイリング)は、PLANET(地球環境)、SOCIETY(社会)、PEOPLE(人)の3つの柱でサステナビリティ活動に取り組んでいます。「服のチカラを、社会のチカラに。」をサステナビリティステートメントに掲げています。
PLANETでは、「よりよい地球環境を実現するためのさまざまなアクション」として、すべての商品をリユース・リサイクルする取り組み「RE.UNIQLO」などを進めており、CO2削減や資源の有効活用に貢献しています。
SOCIETYでは、「地域社会の平和と安定に貢献するためにユニクロができること」として、身近な街をきれいにすることで、世界の「海洋ゴミ」を減らそうとするゴミ拾い活動「スポGOMI」を開催しています。「スポGOMI」は、楽しみながら地球の未来に貢献できるようにと、スポーツ感覚で楽しめるような工夫がされた新感覚のゴミ拾いです。
PEOPLEでは、「あらゆる違いを個性として尊重しながら最高のチームへ」として、コロナ禍で貧困や家庭内暴力に苦しむ女性への支援で、衣服をプレゼントする「若草プロジェクト×ユニクロ」などに取り組んでいます。
建設業界|大林組
大林組では2011年に「Obayashi Green Vision 2050」を策定し、再生可能エネルギー事業の推進などを進めてきました。自然環境への取り組みだけではなく、経営基盤としてのESGやSDGs、SCM(サプライチェーン・マネジメント)など、経営や社会活動まで視野を広げた取り組みのため、2019年には、「Obayashi Sustainability Vision 2050(OSV2050)」へ改訂しました。
「脱炭素」、「価値ある空間・サービスの提供」、「サステナブル・サプライチェーンの共創」を目標に掲げ、事業を展開しています。
SCM(サプライチェーンマネジメント)とは? 導入メリット、ERPとの違い
飲食業界|スターバックス
スターバックスでは、事業運営を通じて、資源を使うよりも生み出し還元していく「リソースポジティブ」をビジョンとしています。世界各地でリユーザブルカップの提供や、環境負荷低減に向けた再生可能なエネルギーの利用など、さまざまな取り組みをおこなっています。
さらに、「グリーナーストア」と呼ばれる店舗の展開も進めています。この店舗は、世界自然保護基金(WWF)と策定した国際認証「Starbucks Greener Stores Framework」を取得した店舗です。この国際認証を満たすことで、従来の店舗に比べてCO2排出量約30%、水使用量約20%の削減できます。また、調達においてフェアトレードの遵守や労働環境の保護も重要視しています。日経BPが2021年10月に発表した「第2回ESGブランド調査」では、総合3位に選出され、プラスチックの使用削減や従業員が働きやすい環境づくりなどの点で高く評価されました。
まとめ
昨今、企業は利益重視だった時代から、社会的・環境的問題への責任が問われる時代へと変化しています。今後も成長を続けるためには、サステナビリティ経営の実践が不可欠となるでしょう。このような風潮を軽視せず、ひとつずつでも取り組むことで、企業ブランドの価値向上や事業拡大、新たな価値創造につながるかもしれません。これを機会にぜひ取り組みを検討してみてください。
業務デジタル化クラウドサービス「SmartDB®(スマートデービー)」も、業務のデジタル化によるペーパーレス化で紙削減の実現、業務効率化による働きやすい環境づくりという面で、企業のサステナビリティにお役立ちします。また、サステナビリティ経営の際に新たに発生する管理・報告業務にも「SmartDB」が活用できます。最後に、「SmartDB」でペーパーレスや業務効率化を実現した事例をご紹介します。ぜひ導入をご検討ください。
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この記事の執筆者:伊藤(マーケティング本部)
2021年5月にドリーム・アーツに入社
SmartDBやShopらんのプロモーション活動をおこなっています。日々新しいことの連続で、勉強中です!
これからも皆さんの役に立つような情報を発信していきます!